水しぶきが気持ちよくて涼しいし、車の乾きも早いしで、良いこと尽くめな気がしますが…
でも、どうしても猛暑の時に洗車をしたい!洗車する必要がある!という方のために、ここではなぜ炎天下での洗車は避けるべきなのか解説するとともに、どうしても洗車をしたい時の裏技もご紹介していきます。
【結論】炎天下で洗車してはいけない理由
結論から申せば炎天下で車を洗うと車に様々なリスクがあります。
ここではどんなリスクがあるのかについて、詳しく具体的にご紹介していきます。
ボディの温度
例えば、黒色の車を40度近い気温の中で洗車をすると、ボディの温度は70度を超えます。
70度と言えば、温泉玉子や蒸し鶏など、蒸し料理が一番美味しくできる温度です。
その灼熱ボディに撒いたシャワーの水分は、10秒くらいで乾き始め、1分半程度で蒸発します。
そのような状況で洗車をすれば、ボディが蒸発した水分のシミだらけ…「ウォータースポット」だらけになってしまいます。キレイに車を洗ったつもりが、洗い終わってみると、洗車前よりも汚くなっている…ということになりかねません。
その知識なく、真夏にも洗車をする人が多いため、夏は1年の中で1番ウォータースポットが目立つ時期です。
特に、炎天下でのシャンプーは必ずと言って良いほど、泡が痕になって残ってしまいます。更に炎天下の中、洗車を無理に行うと暑さゆえに汗だくになった上「やらなければ良かった…」と後悔し、無駄な時間を過ごすことになります。
車はキズ物、自分は暑さとショックから心身ともにグッタリ…という、まさに「骨折り損のくたびれもうけ」になってしまう可能性があります。
勘違いしがちですが、このように、炎天下での洗車はデメリットだらけです。
イオンデポジット
雨の多い梅雨時期から真夏の洗車においては、イオンデポジットという現象が起きやすいことで知られています。
そもそも、イオンデポジットとは車のボディ表面にできる白い斑点のことで、ボンネットやルーフなどボディの上向きの面にできることが多いものです。
イオンデポジットは、水分が蒸発することにより雨水や水道水に含まれるカルシウム等のミネラルが車の塗装面に残ってしまうことで生じます。
一度イオンデポジットが車体に付着してしまうと簡単な水洗いでは落ちず、コンパウンドなどで磨き上げるか、プロ仕様の酸性のケミカル剤でないと落としにくくなってしまいます。
また、イオンデポジットは放置すると蓄積する性質を持ちます。
一度できてしまった場所には水分が溜まりやすくなり、日光などで乾燥と蒸発を繰り返してしまうとその硬度も増して一層除去が困難となってしまい、めちゃくちゃ大変です。
さらに一番悪い状況になってくると、イオンデポジットを長期間放置した時に付着してしまった水分が、光を集めるレンズの様な効果を果たしてしまい、車のボディ表面を侵食してしまうケースもあります。
こうなってしまうと修復に時間も費用もかかってしまうので、気温が高く直射日光が強く当たる真夏の時期は、洗車時に洗剤を付けたところから素早く水洗いしつつ、水分を取り去るようにしっかりと拭き上げてイオンデポジットを防ぐ必要があります。
ウォータースポット
真夏の炎天下で洗車したら、ウォータースポットが出来ます。このウォータースポット、できたらかなりまずい状態と言えるので、できないように努力しましょう。
なお、イオンデポジットとウォータースポットは発生した時に浸透する深さが異なります。
真夏の炎天下は水分があっという間に蒸発します。そうすると水分の中に含まれている不純物のみが残ってウォータースポットができてしまうのですが・・・ウォータースポットは、コーティングだけでなく元の塗装までしみこんで「リング状のシミ」を作ってしまいます。
特にブラック系の塗装だとウォータースポットはとても目立ってしまうので、最悪削り取っただけでは取れない場合もあります。
そうなると再塗装なども検討しなければいけなくなってしまうのでかなりまずい状態なのです。そうならないために水分が蒸発しにくい夕方に洗車をすることやプロの方に洗車を依頼しましょう。
コーティングのムラ
真夏の炎天下で洗車とコーティングしたら、コーティングにムラが出来てしまい、コーティングが汚くなります。そのためほとんどのコーティングは真夏の炎天下での作業をしないように注意喚起されていたりします。
ちなみに炎天下で猛暑の日にコーティングを行うと・・・その仕上がりは、反射が汚くなることや場所によって質感が変わるといった状態になります。これを避けるためには、コーティングをする前に洗車を行うことが常とうの手段です。
しかし、この時炎天下だとイオンデポジットやウォータースポットが発生してしまうので、負のスパイラルとなってしまいます。
こういったトラブルがわずかにでもあるとコーティングの付き方が悪くなり、ムラができてしまうのです。さらにコーティング自体も炎天下では乾き方に差が出てしまい、不自然な統一性のない輝きになってしまいます。
下地が綺麗でないところに更にコーティング剤のムラが出てしまいやすいというのが真夏の炎天下です。
そのため、本当に仕上がりが良くないと言わざるを得ません。
特に個人で行う場合真夏の炎天下でのコーティングは行わないことを強くおすすめします。
どうしてもその季節にコーティングをしたい場合は、プロに依頼しましょう!
さらにプロが作業しやすいよう(曇りの日や夜間などに行うことが多いため)に数日間預ける位の時間的な・気持ち的な余裕が必要です。
(※本当に泣けてくるくらい悲惨な状態になるので、炎天下でコーティングをするのは絶対にやめましょう)
【番外編】熱中症
熱中症対策をとらずに、真夏の炎天下で洗車をすると、高い確率で熱中症になります。熱中症は、気温の高い場所で、全身の健康状態のバランスが崩れる状態のことをいいます。
実際に、炎天下で洗車をしていた人が熱中症になった例としては日頃から自宅の中ではクーラーの効いた部屋で過ごし、氷を大量に入れたジュースやアイスコーヒーを飲んだり、アイスを毎日食べており、ふだん体を冷やしている生活なのに、あるとき炎天下で洗車をしていたところ、熱中症になってしまったケースがあります。
体を冷やしたり温めることの繰り返しをしているうちに、体の体温調節機能がはたらかなくなってしまったのです。
おまけに、洗車をしている最中に大量の汗をかいてしまっていても、スポーツドリンクや水分の補給をしていなかったため、脱水症状を起こしてしまったのです。さらに、この人の場合は帽子をかぶらずに洗車をしていました。
この結果、この人は重度の熱中症の症状を見せました。吐き気を催したり、体が激しいけいれんを示したのです。
たかだか洗車で、これは悲惨です。また、このような状態になると笑い事ではなく、大変危険です。
この事例では近くにいた家族がすみやかに救急車を呼び、その人を病院に救急搬送させました。病院では点滴をされ、数時間ベッドに横たわり命に別状はありませんでした。その日のうちに帰宅することができたのです。
たかが洗車と考えて、熱中症の予防対策をとらないと、命の危険を招きます。炎天下の洗車、楽しそうですがこんな苦労やリスクが伴うわけです。
どうしても炎天下で洗車したい時の対処法
様々な事情によって、どうしても炎天下や暑い日に洗車をしたい・しなければならない!というケースもあるでしょう。その時にはどうすれば良いか?ということで、ここではプロ直伝の「炎天下で洗車したい時の対処法」をご紹介していきます。こちらを守れば、リスクを最小限に留めることも不可能ではありません。
早朝を狙う
真夏に洗車するなら早朝が一番よいでしょう。確かに真夏の日中は爽やかで洗車したい気持ちになるのですが、真夏は日中になると気温がかなり上昇し、洗車効果がなかなか得られない状態になってしまいます。
天候に関しては晴れよりも曇りのときがよいでしょう。また、風があまりないときにしましょう。風があると砂やホコリなどが飛んできて洗車効果が減少してしまいます。真夏に洗車するなら曇りの日の早朝で風がないときがベストといえます。
どうしても早朝が難しい場合は夕方がおすすめです。夕方に洗車する場合は、陽が沈んで薄暗くなってから洗車するようにしましょう。
真夏の洗車は時間帯に気をつけて車にシャンプーのシミなどの汚れをつけてしまわないように注意しましょう。
スピードを意識する
真夏の炎天下は、車を一生懸命洗ったとしてもすぐに乾いてしまう訳なので、ふき残しがあったらその部分だけ汚れて見えてしまいます。
特に色が暗めの車は目立ちやすく、綺麗に洗ったのにそこだけ気になってしまうという人も多い印象です。
もしどうしても洗車をしなければいけないのであればスピード勝負で行わなければいけません。例えば一気に全体を濡らしてしまって洗車をすると大変ですから、少しずつ部分部分で濡らして洗車する方法もあります。
それでもウォータースポットはできやすいので、濡らしてしまったらすぐに洗ってすぐにふいての繰り返しで対応するのが重要です。
これは洗車を普段している自動車整備士やガソリンスタンドのスタッフなどのプロでも難しい技術で、洗車のプロでも難儀することがあります。
洗う順番を意識する
順番を考えるのはとても重要です。
例えば上から下へ効率よく行い、タイヤやホイールなど時間がかかるところは最初に時間をかけるといったことも大切です。こういった順番を意識することで、速やかに洗車が完了します。
洗車が楽しくて時間をかける方がいますが、真夏に行う場合は楽しむよりも車を守る意味でも順番を厳密に決めて一気に洗いましょう。
こういった車へのダメージを考えた上で順番を意識することは大切ですが、それ以外にも洗うこちらの体調を考える意味でも順番は重要です。とにかく夏場は暑く体力を消耗します。
ボディーや地面の照り返しによって体温が一気に上げられるのがその理由です。体温上昇ををコントロールするために体力を使って汗をかくなどの反応を強いられ、それが疲れや熱中症へつながっていきます。
そういった状態にならないために、水分の補給や涼しい恰好などの準備も必要ですが、順番を意識して迅速に終わらせることも重要です。
拭き取りを徹底する
真夏の炎天下で洗車するなら拭き取りは徹底したほうが間違いなく良いでしょう。
理由は、なんといっても先ほどから再三にわたってご紹介している通り、真夏の炎天下で洗車を行い拭き取りが甘いと、イオンデポジットが発生してしまう、ウォータスポットができやすいといった理由が挙げられます。
炎天下は水分あっという間に蒸発するので、一見ふき取りはいらないように感じられます。車にちょっと詳しいくらいの人であれば、拭き取りなんてしなくても勝手に乾くだろうくらいのことを言いそうなものですが、これは絶対にやってはいけません。後から、とんでもない目に遭ってしまうので絶対にやめましょう。
ちなみに洗車をしてすぐに車を走らせれば走行風で水なんて吹き飛んでしまうだろう!という考えの方もいらっしゃいますが、実際にこれがそうでもありません。
ガラスコーティングが完璧にかかっていればまだ水分がすべて走行風で吹き飛んでしまう可能性はありますが、いずれにしても車に少しでも水が残れば、ウォータースポット・イオンデポジットが発生する可能性が極めて高くなります。そうなると逆に見た目が汚くなってしまう可能性もあります。
綺麗な塗装面を維持したければ、きちんと拭き上げは行うようにしましょう。
炎天下での洗車Q&A
炎天下での洗車、なかなかわからないというところも多いでしょう。ここではよくいただくご質問についてQ&A形式でご紹介していきます。
炎天下の洗車、プロに頼むのはOK?
炎天下の洗車は、プロに頼んだほうが確実に良い結果をもたらします。
理由は、作業環境がしっかりしている、使用する洗剤が良い、そして拭き取り技術が高いというものが挙げられます。
作業環境は、自宅の庭先や照り返しの激しい日中の洗車場のような環境ではなく作業しやすい環境が車体にとってベストなのですが、プロに依頼するとこのような作業環境が提供されますので
例えば、しっかりとした整備場内であったり、作業時間も気温が低く、太陽光がそこまで強くない夕方に行う等の工夫がされています。
また使用する洗剤も洗浄力が強く撥水性を与えるもの等、特殊なものを使用していることも少なくありません。
また、コーティングの状態やキズやシミの状況も確認しながら洗車用の洗剤を選択していますから、一味違った洗浄を行ってくれます。さらに水もイオンデポジットが発生しにくい純水を使用している場合もあるため、安心です。
拭き取り技術も高いため、ウォータースポットができることもほぼありません。
もちろんイオンデポジットの発生もしませんから、炎天下の洗車でありがちなトラブルはほぼ無いと考えても良いのではないでしょうか。
そういった意味で愛車を炎天下でもきれいにしたい場合はプロに依頼して洗車してもらうことをオススメします。予約制のところも多いので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
ガラスコーティングしてれば、大丈夫でしょ?
ガラスコーティングしてれば真夏の炎天下で洗車しても大丈夫と思いがちですが、塗装が傷むことがあります。
たしかにガラスコーティングは一見光輝く車体をキープし、少し洗車をすればすぐに美しさが戻ると思われがちです。しかし、炎天下の環境下で洗車を行う場合は例外と言えます。
水滴が急速に乾く環境なので、どんどんウォータースポットやイオンデポジットが発生してしまうのです。これはガラスコーティングをしていても固着することがあり、せっかくの撥水効果を阻害してしまうことも少なくありません。
そういった意味で、炎天下での洗車はガラスコーティングがしてあったとしてもオススメできるものではないではないのです。もちろん炎天下に強いガラスコーティングもあり、むしろボディの温度が高い場合によく撥水してくれるものもあります。
そういったものは冬場の場合、ボディを温める必要があるなど手間がかかるということを知っておきましょう。いずれにしてもガラスコーティングをしてあるからと言って、どんな環境下でも調子よく洗車ができるわけではないということです。
まずは、自分のクルマのガラスコーティングが炎天下の環境下でも洗車が問題ないかを調べてみるのをお勧めします。
まとめ
このように洗車は炎天下で行うと様々な部分でリスクがあることがわかりました。つまり、一般的なイメージとは異なり炎天下を避けておこなった方が良いというわけです。どうしても炎天下や猛暑の時に洗車をしなければならない際には、今回ご紹介したような方法を取ってみると良いでしょう。